信州大学留学生向け「日本企業文化理解・日本での就職活動の仕方理解講座」

2018年8月8日―9日にかけて、信州大学留学生向けに日本企業への就職のための「日本企業文化理解講座」を実施しました。

 

 

日本で就職を希望する留学生のうち、実際に就職できるのは3割にとどまっています。国の方針としては、3割を5割に上昇させたいと目標を置いています。信州大学では、金沢大学と提携し、「かがやき・つなぐ」北陸・信州留学生就職促進プログラムを進めています。

 

http://kagayaki-shinshu-u.jp/

 

留学生が日本企業に就職しにくい状況は主に4つ。

  1. 時間:研究に忙しく、就職活動ができない
  2. 情報自分が知っている企業への就職エントリーをするため、競争が激しい。日本式の新卒一括採用の就職スケジュールを知らず、出遅れる。
  3. お金:インターンシップ、会社説明会、面接等の交通費、リクルートスーツ等の出費への負担が重い
  4. 日本語力 :日本企業が留学生に期待する日本語レベルは、日本人と同等以上。N1だけではなく、ビジネス日本語の目安となるテストのJ1レベルを想定し、ネーティブの日本人の中のグループでも、日本人同等以上にディスカッションに参加し、秀でることを求められる。

4については、日本企業側にも再考すべき点があるのですが、特に留学生側で努力すべきことは、1、2、3であり、そして引き続き継続的に4となります。

今回のセッションでは、2の部分の情報を留学生側に提供することで、就職率向上に貢献することを期待しました。

特に、日本人あるいは他の留学生と同様の就職活動を行うと、なかなか就職に至らない現実をお話ししました。

通常の就職活動は、いわゆるレッドオーション(赤い海。血で血を洗う競争の激しい領域)での戦いとなっている状況です。

まず、留学生は(日本人学生も同様の傾向がありますが)、自分が知っているB to Cのブランド力の高い企業、必然的に大企業に対し、就職活動を行います。

しかし、実際に留学生が就職できた事例の研究報告によると、中小企業への就職50人以下の従業員規模が約40%、300人未満の従業員規模の企業への就職は、なんと67.8%を占めています。まず、留学生はこの現実を知りません。

また、日本の企業が求めている日本語力のレベルは、N1以上、つまりビジネス日本語レベルのJ1、J2を含むと希望する企業が96.5%(英語を話さない場合)であることをまず知らないケースが多いです。

そうすると日本語能力がN2あるいはN3の留学生にとっては、主な構成は中国およびベトナム、あるいは韓国からの留学生が主力勢ですが、不利に働きます。そのレッドオーシャンを勝ち残るのは、日本人以上の語学力をもち、リーダーシップ・コミュニケーション能力、専門知識に優れる、超優秀層(特に日本学生が不足しがちの理工系)に偏りがちになります。

最初からわかっている結末に向かって、多くの留学生は、彼らの限られたコスト・時間・エネルギーを投資し、レッドオーションを泳いでいる状況にあります。

では、ブルーオーシャン(競合相手のいない未開拓の領域)は、留学生、特に地方の留学生に存在するのでしょうか?

答えはYESです。

地方の留学生にとっての強みは、地方の大学にいることです。そして、地方の優良企業とのネットワークにアクセスできる点にあります。

しかし、残念ながら、留学生は地元にどのような企業があるのかをあまり知りません。

ご存じのとおり、地方都市には、留学生には名前の知られていない優良企業が上場企業をはじめ、多くの中小企業が存在しています。そうした企業は主に、B to Cの企業ではなく、B to Bの企業が多いということ。また、そうした企業を知り、人的ネットワークを築いていくことの重要性、またそうした企業の①調達、②生産、③販売、④サービス、⑤人的資源管理等のバリューチェーンの各段階でグローバル化が進んでいる企業あるいはこれから進めようとしている企業の情報をつかみ、自分の貢献できる領域を見える化し、アピールしていくことの重要性をお伝えしました。

そうした地方に存在する優良企業には、通常の就職情報ネット(リクナビ、マイナビ、キャリタス等)に載せていない企業も数多く存在し、大学とのネットワークや人脈、直接公募で採用している企業の存在を、会社リストを配布して、お伝えしました。また、企業のホームページの閲覧方法と、その情報から自分の強みをどのように見つけていくかを具体的にお伝えしました。

テキストは、当初の内容では、留学生の日本語レベルで対応できないのではとの懸念が主催者側で寄せられ、主要テキストにはルビを振り、内容をシンプルにして対応。実際、参加者の中には交換留学生もふくまれ、普段授業は日本語ではなく英語をベースにしている参加者も含まれましたので、英語が理解できるグループを別に編成し、日本語と英語と同時で進行させました。

参考カリキュラム:カリキュラム案(2018年8月8-9日)ルビなし

 

なお、信州大学では留学生を積極的に採用させたい地元企業のコンソーシアムも結成されているとのこと。

http://kagayaki-shinshu-u.jp/consortium/

また、全国的にも同様の動きがみられます。

留学生の皆さんはぜひ、こうしたコンソーシアムとのネットワークを早期の段階から密にすることをお勧めします。

また、企業の皆様は、特に中小企業の皆さんは、こうした地元のこうしたコンソーシアムに参加されていくことをお勧めいたします。